インフラ保守業務の現場では、デジタル化が急務となっている中、ローコードを活用したアプリケーション開発が注目されています。本記事では、インフラ保守アプリケーションにおけるセキュリティ要件とローコード開発の両立可能性について解説します。
1. 背景:インフラ業界におけるDXの遅れと課題
電力・鉄道・自治体・道路インフラなど、公共性の高い分野では、保守・点検業務のデジタル化が急務となっています。
しかし、現場では依然として以下の課題が残っています:
- 点検記録は紙やExcelベース、属人化が進んでいる
- 現場作業員との情報共有にタイムラグがある
- アプリ開発には時間・予算・専門人材が不足している
- 一方で、セキュリティポリシーは年々厳格化
こうした背景から、開発スピードと柔軟性を兼ね備えた「ローコード開発」への注目が高まっています。
2. ローコードとは?なぜインフラ業務に適しているのか?
ローコード開発とは
最小限のコーディング、またはGUI操作でアプリを構築できる手法。IT部門だけでなく、業務部門主体の市民開発とも親和性が高く、DXの現場導入を後押しします。
インフラ業務における利点
- 点検記録やチェックリストの迅速なデジタル化
- モバイル端末向けUIの作成が容易
- 専門エンジニアが不在でもPoCレベルから着手可能
- Excelや紙業務の置き換えがスムーズ
- アジャイル型運用で改善サイクルが短縮
3. 問題:セキュリティとのトレードオフ
公共・重要インフラの業務では、利便性よりセキュリティ要件の遵守が最重要です。
| 項目 | 代表的な要件 |
| アクセス管理 | SSO・LDAP連携、RBAC(役割ベース制御) |
| データ管理 | ログ出力、保存・通信時の暗号化 |
| ネットワーク | LGWANなど閉域網環境での動作 |
| 開発・運用 | 内部統制、第三者セキュリティ評価の実施 |
| 権限管理 | ログイン・編集・承認などの権限分離設計 |
セキュリティ部門の許可がなければ、便利なアプリでも現場導入は不可となるケースが多くあります。
4. 安全に導入するためのアプローチ
① プラットフォーム選定
以下のようなエンタープライズ対応ローコード基盤を選定:
- Microsoft Power Platform
- OutSystems
- Mendix
選定時のチェック項目:
- RBAC対応・監査ログ機能の有無
- オンプレミスや閉域網での構築経験
- 官公庁・金融機関での導入実績
② 設計段階でのセキュリティ考慮
- 画面・機能単位でのユーザー権限設計
- APIアクセス制御・トークンの適切管理
- 監査ログの整備と改ざん防止措置
- データ保存場所の明確化(クラウド/ローカル)
③ テスト・監査体制の構築
- 開発初期からセキュリティ部門と連携
- 導入前の脆弱性診断の実施
- 外部セキュリティベンダーとの連携による監査・是正
5. 信頼できる知見から学ぶ
ローコード開発は利便性が高い一方、誤った実装はセキュリティホールを生む可能性があります。
参考:
🔗 ローコード/ノーコード開発基盤のセキュリティの落とし穴|留意するべき4つのポイントを解説(NRIセキュア)
6. まとめ
- ローコードはインフラ保守業務のDXを加速する強力な手段
- しかし、スピードのみを重視すると導入失敗のリスクも増加
- 初期段階からセキュリティ設計を取り込み、ITガバナンスとの両立を実現することが重要
- 成功のカギは、セキュリティ要件を理解し、乗り越える設計力とチーム連携にあります
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